輸液治療が長引く場合や、高カロリー輸液(TPN)を行う場合は、水や電解質だけでなく ビタミンや微量元素(ミネラル) の補充が必要になります。 補助製剤には様々な種類がありますが、大きく分けると以下のようになります。
💊 補助製剤の主な分類と代表的なお薬
| 分類 | 代表的な製剤名 | 主な目的 |
|---|---|---|
| ①総合ビタミン製剤 | オーツカMV注、ビタジェクト注キット、ダイメジン・マルチ注 | TPN時のビタミン補給 |
| ②B群・単独ビタミン製剤 | ビタメジン、アリナミンF、ビタシミン注など | 特定のビタミン(B群、Cなど)の補給 |
| ③微量元素製剤(総合・単独) | エレメンミック注、アセレンド注、フェジン静注など | 亜鉛や鉄、セレンなどの微小ミネラルの補給 |
| ④電解質補正液 | KCL注、カルチコール、硫酸Mg、リン酸Naなど | カリウム、カルシウム等の大容量ミネラル(電解質)の補正 |
① 総合ビタミン製剤(TPN用)
高カロリー輸液(TPN)を行う際に、1日に必要なビタミン(水に溶けるタイプ・油に溶けるタイプすべて)をまとめて補給するためのお薬です。長期間、口から食事がとれない患者さんには欠かせません。
- 特徴: 光で分解しやすいビタミン(特にビタミンB2)が含まれているため、点滴中は薬の成分が壊れないように**遮光カバー(光を遮る袋)**を被せる必要があります。
▼ 代表的なお薬と成分含有量比較表(1日分あたり)
② 特定のビタミンを補給する製剤(B群・単独ビタミン)
すべてのビタミンをまとめた総合製剤とは異なり、「ビタミンB群」や「ビタミンC」など、特定のビタミンだけをピンポイントで補給するためのお薬です。
▼ 代表的なお薬と成分・特徴
| 製剤名 | 成分 | 特徴・使われるケース |
|---|---|---|
| ビタメジン静注用 | ビタミンB1・B6・B12 | TPN用ではなく、**B1・B6・B12の配合剤**。 ご飯を食べずに「ブドウ糖」の点滴だけを長く続けると起こる「ウェルニッケ脳症」の予防によく使われます。 |
| アリナミンF注 | ビタミンB1(フルスルチアミン) | ビタミンB1単独のお薬。点滴時に患者さん自身が「ニンニクのにおい」を感じることがあります。 B6やB12の補充は不要で、純粋にビタミンB1だけを重点的に補給したい場合(重度のB1欠乏症や脚気など)や、エネルギー代謝改善による疲労回復などの目的で選ばれます。 |
| ビタミンB1注 | ビタミンB1 | アルコールに依存している患者さんなど、急激なB1不足が疑われる場合に単独で使われることがあります。 |
| ビタシミン注 | ビタミンC | コラーゲンの合成を助け、皮膚や血管の組織を修復する働きがあります。 添付文書に「褥瘡」と直接は書かれていませんが、傷を治すためにビタミンCが大量に消費されるため、「消耗性疾患における補給」などの扱いで、褥瘡(床ずれ)がひどい患者さんの点滴に追加されることがよくあります。 |
③ 微量元素製剤(総合・単独)
長期の点滴生活で不足しがちな、体に必要な「ミネラル類」を補うためのお薬です。 鉄(Fe)やセレン(Se)も、電解質ではなくこの「微量元素」に分類されます。複数をまとめた「総合製剤」と、特定のミネラルだけを補う「単独製剤」があります。
▼ 総合微量元素製剤(1アンプル中の含有量) 1日1アンプルをTPN(高カロリー輸液)に混ぜて投与します。
| 製剤名 | 亜鉛(Zn) | 鉄(Fe) | 銅(Cu) | マンガン(Mn) | ヨウ素(I) |
|---|---|---|---|---|---|
| エレメンミック注 | 60μmol (約3.9mg) |
35μmol (約2.0mg) |
5μmol (約0.3mg) |
1μmol (約0.05mg) |
1μmol (約0.13mg) |
| ミネラリン配合静注 | 60μmol (約3.9mg) |
35μmol (約2.0mg) |
5μmol (約0.3mg) |
1μmol (約0.05mg) |
1μmol (約0.13mg) |
▼ 単独の微量元素製剤(セレン・鉄など) 総合微量元素製剤に含まれていない成分(セレンなど)や、特に不足が激しい成分(鉄など)をピンポイントで補います。
| 製剤名 | 成分・目的 | 特徴・⚠️ 薬剤師の重要ポイント |
|---|---|---|
| アセレンド注 | Se(セレン)の補充 | 微量元素製剤にはセレンが含まれていないため、長期間TPNを行っているとセレンが不足することがあります。 ・長期TPN(数ヶ月以上にわたる場合) ・セレン欠乏症(筋肉の痛み、心臓の働きが落ちる、爪が白くなる等の症状が出た場合)に使われます。 |
| フェジン静注 | Fe(鉄分)の補充 | 鉄分が足りない貧血(鉄欠乏性貧血)の患者さんで、飲み薬が飲めなかったり、胃腸からうまく吸収できない時に使われます。 ⚠️必ず「ブドウ糖液(5%ブドウ糖液など)」に混ぜて点滴します。 生理食塩水などの塩分(電解質)が入っている液に混ぜると、濁ったり成分が沈んでしまったりするため絶対にダメ(禁忌)です。 ※薬剤師の試験にもよく出るポイントです! |
④ 電解質補正液(カリウム、カルシウム等)
「微量元素(亜鉛や銅など)」 が体の酵素の働きを助けるために微量(mgやμg単位)必要なミネラルであるのに対し、「電解質(カリウムやカルシウムなど)」 は体液のバランスや神経伝達、骨の形成などのために大量(gやmEq単位)に必要なミネラルです。 採血データ等を見て、不足している電解質をピンポイントで「補正(追加)」するために使われます。
▼ 代表的な電解質補正液
| 代表的な製剤名 | 目的 | 特徴・⚠️ 薬剤師の重要ポイント |
|---|---|---|
| KCL注(塩化カリウム) | カリウム補給 | 細胞の働きや心臓の筋肉に不可欠な電解質です。 ⚠️ 【超重要】 原液のまま急速投与すると心停止の危険があります。必ず薄めて、ゆっくり時間をかけて投与しなければならない「絶対要注意薬」です。 |
| カルチコール静注など | カルシウム補給 | 骨の形成や筋肉の収縮に必要な電解質です。 リン酸が含まれる輸液と直接混ぜると、白く濁って沈殿(リン酸カルシウムの析出)を起こすことがあるため、配合変化に注意が必要です。 |
| 硫酸マグネシウム補正液など | マグネシウム補給 | 低栄養の患者さんに急に栄養を入れた時に起きる「リフィーディング症候群」などでマグネシウムが急低下した際によく使われます。 |
| リン酸Na補正液など | リン補給 | カルシウムと同様、骨の形成や細胞のエネルギー作りに必要です。 カルシウム製剤との配合変化(白濁)に最も注意すべき電解質です。 |