ホーム>在宅医療>新人薬剤師・看護師向け!末梢静脈栄養(PPN)製剤の種類・特徴・使い分けをわかりやすく解説
目次

「輸液って種類が多すぎて覚えられない……」

日々の業務の中で、いつの間にか「医師から指示されたものをそのまま払い出す」ことが当たり前になってしまっていました。 そんなある日、自店舗の薬局には在庫がない輸液が処方されるという出来事が。

慌てて医師へ疑義照会の電話をかけたとき、返ってきたのはこんな一言でした。

「じゃあ、同じ系統でいま薬局にある輸液は何?」

……背中に変な汗をかいた瞬間でした。「同じ系統の輸液ってどれだっけ?」とっさに答えられず、自分の知識不足を痛感しました。

「これではいけない。言われるがままではなく、輸液の分類や意図を自分でしっかり理解できるようになろう!」 そう決意して、このノートに輸液の分類と使い分けをまとめることにしました。


📖 はじめに:PPN(末梢静脈栄養)ってなに?

「手術のあと数日間だけ食事が摂れないから、腕の点滴から栄養を入れておこう」

このようなときに使われるのが、末梢静脈栄養(PPN:Peripheral Parenteral Nutrition) です。 普段、風邪をひいたり脱水になったりした時に打つ「水・電解質輸液(3号液など)」は、水分や塩分の補給がメインであり、生きていくための「カロリー」や体を作る「タンパク質」はほとんど入っていません。

そこで、腕や足などの細い血管(末梢静脈)からでも、少しでもカロリーとタンパク質(アミノ酸)を補給しよう! と作られたのがPPN製剤です。「アミノ酸含有糖質電解質液」などとも呼ばれます。

ただし、末梢静脈は血管が細いため、あまり濃いドロドロの栄養液(浸透圧が高い液)を入れると、血管が傷ついて強い痛み(血管痛)が出たり、静脈炎を起こしてしまいます。そのため、「血液の約3倍(浸透圧比3)まで」 という濃さの限界ギリギリを攻めて作られているのがPPN製剤の特徴です。


💧 PPN製剤の大きな分類

PPN製剤のベースは、水分と電解質(1日に必要な量がバランスよく入っている3号液など)に、筋肉や血の材料になる 「アミノ酸」 をプラスしたものです。

現在使われているキット製剤は、そこからさらに 「ビタミンや脂肪が最初から入っているか」 によって大きく3つのグループに分けられます。


1️⃣ ① ビタミンB1・総合ビタミン入り製剤(主流)

糖分(カロリー)を体の中でエネルギーに変えるには、「ビタミンB1」 が必須です。これを補わないと、ビタミンB1不足による重大な副作用(乳酸アシドーシスやウェルニッケ脳症)が起こる危険があります。そのため、現在は最初からビタミンがセットになっている製剤が主流です。

製剤名 容量
(mL)
Na K Ca Mg Cl 糖質
(g)
アミノ酸
(g)
総カロリー
(kcal)
ビーフリード
(ビタミンB1配合)
500 17.5 10 2.5 2.5 17.5 37.5 15 210
1000 35 20 5 5 35 75 30 420
パレプラス
(総合ビタミン配合)
500 17.1 10 2.5 2.5 17.6 37.5 15 210
1000 34.2 20 5 5 35.2 75 30 420

※ 電解質の単位: mEq/容器

💡 ビタミン入り製剤の各論・使い分け

  • ビーフリード: PPN製剤の超定番!とりあえずこれ、というくらい全国の病院で最もよく使われています。糖分とビタミンB1が別々の部屋に入っており、使う直前に隔壁を開通させて混ぜます。
  • パレプラス: ビーフリードにはビタミンB1しか入っていませんが、パレプラスは他の水溶性ビタミン(B2, B6, C, 葉酸など)もバランス良く入っています。より栄養状態が低下している患者さんに適しています。

2️⃣ ② ビタミンが入っていない製剤

昔からある製剤で、アミノ酸、糖質、電解質のみが入っています。

製剤名 容量
(mL)
Na K Ca Mg Cl 糖質
(g)
アミノ酸
(g)
総カロリー
(kcal)
アミノフリード 500 17.5 10 2.5 2.5 17.5 37.5 15 210
1000 35 20 5 5 35 75 30 420
ツインパル 500 17.5 10 2.5 2.5 17.5 37.5 15 210
1000 35 20 5 5 35 75 30 420

※ 電解質の単位: mEq/容器

💡 ビタミンなし製剤の各論・使い分け

  • アミノフリード、ツインパルなど: ビタミンが入っていないため、長期間(数日以上)使う場合は、別にビタミン剤(ビタメジンなど)を注射器で混注してあげる必要があります。「とりあえず1〜2日だけ」といったごく短期間のつなぎとして使われたり、特定のビタミン剤を自分で選びたい時に使われます。

3️⃣ ③ 脂肪乳剤入り製剤(新しいタイプ)

カロリーを稼ぐためには「脂肪」がとても効率が良いのですが、脂肪の粒子を末梢静脈から入れるのは難しく、長らく「末梢から脂肪を入れるキット製剤」はありませんでした。そこに登場した画期的な製剤です。

製剤名 容量
(mL)
Na K Ca Mg Cl 糖質
(g)
アミノ酸
(g)
脂質
(g)
総カロリー
(kcal)
エネフリード
(総合ビタミン配合)
550 17.5 10 2.5 2.5 17.5 37.5 15 10 310

※ 電解質の単位: mEq/容器

💡 脂肪入り製剤の各論・使い分け

  • エネフリード: 末梢から安全に脂肪乳剤を投与できるように設計された製剤です。少ない水分量(糖分を濃くしすぎない)で、効率よくカロリーを補給できます(1本で310kcal)。総合ビタミンも配合されています。
  • ⚠️注意: 脂肪が入っているため、0.22μmのフィルターは目詰まりして使えません!フィルターの種類を必ず確認してください。

4️⃣ ④ アミノ酸単独製剤(総合アミノ酸・病態別アミノ酸製剤など)

これらは「カロリー(糖質)」や「電解質」をほとんど含まず、純粋に 「アミノ酸(タンパク質の材料)」だけを補給するための製剤 です。PPNとして末梢静脈から投与されることもあれば、TPNのベース液に混注して使われることもあります。

患者さんの病態に合わせて、アミノ酸の配合比率が絶妙に調整されています。

製剤名 主な用途・対象 容量
(mL)
アミノ酸
(g)
特徴
アミパレン 一般の栄養補給 200 20 最も標準的な総合アミノ酸製剤です。手術の前後や、低栄養状態の患者さんに不足したタンパク質を補う目的で広く使われます。
アミノレバン 肝不全 200 16 肝性脳症の改善を目的とした製剤です。肝臓が悪い時に不足しやすい「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」がたっぷり入っています。
キッドミン 腎不全 200 9.6 腎機能が落ちている時に尿毒症の悪化を防ぐため、体内で作れない「必須アミノ酸」だけを中心に配合し、腎臓への負担を減らした製剤です。
プレアミン-P 小児 200 15.2 新生児や乳幼児の成長・発達に適したアミノ酸バランスに調整された小児専用の製剤です。

💡 アミノ酸単独製剤の使い分け・注意点

  • カロリー(エネルギー)と一緒に投与するのが鉄則:アミノ酸だけを点滴しても、体がエネルギー不足だと、せっかくのアミノ酸が単なるエネルギー源として燃やされてしまい、筋肉などの材料になりません(蛋白節約効果が得られない)。そのため、必ず 十分な糖質や脂肪(カロリー)と一緒に投与する 必要があります。
  • 「肝臓が悪いからアミノレバン」「腎臓が悪いからキッドミン」と、病態によって選ぶ製品が変わるのが最大の特徴です。

💡 おまけ:ここがポイント!薬剤師・看護師の注意点と「PPNの限界」

PPNを扱う上で、現場で必ず直面する問題が2つあります。

1. 「血管痛」と「静脈炎」のリスク

PPN製剤は、末梢から入れられるギリギリの濃さ(浸透圧比 約3)に調整されています。しかし、患者さんの血管が細かったり、点滴の速度が速すぎたりすると、 「点滴の針を刺しているところがすごく痛い!」「赤く腫れてきた」 という静脈炎がよく起こります。
👉 対策: 痛みを訴えられたら、まずは点滴の速度を少し遅くしてみたり、刺し直して少し太い血管に変えたりするなどの工夫が必要です(勝手に速度を変えず、必ず医師や先輩看護師に相談しましょう)。

2. 「PPNだけ」では長く生きられない(カロリーの限界)

これが一番重要です。PPN製剤を1日2本(約1,000mL)点滴しても、得られるカロリーは わずか400〜500kcal程度 しかありません。 人間が1日に必要なカロリーは1,500〜2,000kcalですが、PPNでこれを満たそうとすると、1日に3〜4リットル以上も点滴しなければならず、体が水分過多(心不全や肺水腫)になってしまいます。

👉 つまり、PPNはあくまで「1〜2週間程度のつなぎ(補助)」です。 「手術後、口からご飯が食べられるようになるまでの数日間」や「経腸栄養(胃ろうなど)の量が足りない分のちょい足し」として使われます。 もし、2週間以上まったく食事が摂れない状態が続く場合は、PPNのままダラダラ続けるのではなく、 TPN(中心静脈栄養) や 経腸栄養 への切り替えを医師に提案する・検討する時期になります。


📝 まとめ

末梢静脈栄養(PPN)は、口から食事ができない患者さんにとって、身近で手軽な栄養補給の手段です。

  1. 基本はアミノ酸入り:ただの水分補給(3号液など)ではなく、アミノ酸が入っているのが特徴。
  2. ビタミンB1は必須:現在は「ビーフリード」のように最初からビタミンB1が入っている製剤が主流。
  3. 限界を知る:カロリーはあまり稼げないので、長期戦には向かない。

「この患者さんはもう何日もPPNの点滴だけで過ごしているな……カロリー足りているのかな?」 病棟や在宅の現場で、ふとそんな視点を持てるようになれば、あなたも立派な医療チームの一員です!

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