ホーム>在宅医療>新人薬剤師・看護師向け!水・電解質輸液の種類と使い分け、各成分の配合意義までわかりやすく解説
目次

「輸液って種類が多すぎて覚えられない……」

日々の業務の中で、いつの間にか「医師から指示されたものをそのまま払い出す」ことが当たり前になってしまっていました。 そんなある日、自店舗の薬局には在庫がない輸液が処方されるという出来事が。

慌てて医師へ疑義照会の電話をかけたとき、返ってきたのはこんな一言でした。

「じゃあ、同じ系統でいま薬局にある輸液は何?」

……背中に変な汗をかいた瞬間でした。「同じ系統の輸液ってどれだっけ?」とっさに答えられず、自分の知識不足を痛感しました。

「これではいけない。言われるがままではなく、輸液の分類や意図を自分でしっかり理解できるようになろう!」 そう決意して、このノートに輸液の分類と使い分けをまとめることにしました。


💧 水・電解質輸液製剤の大きな分類

点滴などで使われる「水・電解質輸液」は、大きく2つのグループに分けられます。

血液とほぼ同じ濃度の 1️⃣「等張電解質液」

それよりも濃度を薄くしてブドウ糖を混ぜた 2️⃣「低張電解質液」 です。


1️⃣ ① 等張電解質液 (細胞外液補充液)

血液など、細胞の外側にある水分を増やす目的で使われます。大量に出血したときや、ひどい下痢などで水分が急激に失われたときに活躍します。

製剤名 容量
(mL)
Na K Ca Mg Cl 乳酸 酢酸 リン酸 糖質
(%)
生理食塩液 - 154 - - - 154 - - - -
リンゲル液 - 147 4 4.5 - 155.5 - - - -






ソルラクト 250
500
1000
131 4 3 - 110 28 - - -
ラクテックD 500 130 4 3 - 109 28 - - 5
ソルラクトS 250
500
131 4 3 - 110 28 - - 5






ソルアセトF 500
1000
131 4 3 - 109 - 28 - -
フィジオ140 250
500
140 4 3 2 115 - 25
※1
- 1
ヴィーンD 200
500
130 4 3 - 109 - 28 - 5







ビカネイト 500
1000
130 4 3 2 109 - -
※2
- -

※1 グルコン酸3mEq/L、クエン酸6mEq/L、添加物に塩酸を含有
※2 重炭酸28mEq/L、クエン酸4mEq/L
※3 電解質の単位: mEq/L

💡 等張電解質液の使い分け(どう選ぶの?)

どんな時に使うの?: 出血した時、ひどい脱水症状、手術中など

細胞外液補充液にはいくつか種類がありますが、患者さんの状態(特に肝臓の働きや、血液の酸性・アルカリ性のバランス)によって使い分けられます。

  • 生理食塩水
    • 人間の血液とナトリウム・クロールの濃度がほぼ同じです。
    • 特徴: カリウムが含まれていないため、腎臓が悪くてカリウムを排出できない人にも使えます。ただし、大量に点滴すると血液が酸性に傾く(高クロール血症性アシドーシス)リスクがあります。
  • 乳酸リンゲル液
    • 特徴: 生理食塩水の欠点(血液が酸性になること)を改良した、人間の体液により近いバランスの点滴です。「乳酸」は肝臓で代謝されて、血液が酸性になるのを防ぐ役割(アルカリ化)を果たします。
    • 注意: 肝臓の働きが極端に落ちている人には、乳酸が処理しきれずに溜まってしまうため注意が必要です。
  • 酢酸リンゲル液
    • 特徴: 乳酸の代わりに「酢酸」を入れた点滴です。酢酸は肝臓だけでなく筋肉など全身で処理されるため、肝臓が悪い患者さんにも使いやすいのが特徴です。
  • 重炭酸リンゲル液
    • 特徴: 体液のバランスを保つ「重炭酸」が最初からそのまま入っている新しいタイプの点滴です。肝臓や筋肉で代謝される必要がなく、ダイレクトに血液の酸性化を防ぐため、内臓の働きが弱っている重症の患者さんにも安全に使えます。

2️⃣ ② 低張電解質液

細胞の中と外、両方に水分を補給したいときに使われます。含まれている成分(ナトリウムなどの量)によって、さらに1号液から4号液に分けられます。

🏥 1号液 (開始液)

カリウムという成分を含んでいないのが特徴です。患者さんの状態(おしっこがちゃんと出ているかなど)がまだよくわからない、治療の最初の段階で安全のために使われます。

製剤名 容量
(mL)
Na K Ca Mg Cl 乳酸 酢酸 リン酸 糖質
(%)
ソリタ-T1号 200
500
90 - - - 70 20 - - 2.6
ソルデム1 200
500
90 - - - 70 20 - - 2.6
リプラス1号 200
500
90.8 - - - 70.8 20 - - 2.6
KN1号 200
500
77 - - - 77 - - - 2.5

※1 電解質の単位: mEq/L

💡 1号液(開始液)の各論・使い分け

  • 特徴: カリウムが含まれていないことが最大の特徴です。ナトリウム濃度は生理食塩水よりやや低く(90mEq/L程度)、少しの糖分を含みます。
  • どんな時に使うの?: 救急搬送された時や入院直後など、まだ血液検査の結果や腎機能(おしっこがちゃんと出ているか)がわからない段階で、「まずは安全に点滴を開始したいとき」 によく使われます。

💧 2号液 (脱水補給液)

水分やナトリウムと一緒に、カリウムも補給したいときに使われる想定で作られたお薬ですが、現在ではあまり使われることはありません。

製剤名 容量
(mL)
Na K Ca Mg Cl 乳酸 酢酸 リン酸 糖質
(%)
ソリタ-T2号 200
500
84 20 - - 66 20
※1
-
※2
- 3.2
ソルデム2 200
500
77.5 30 - - 59 48.5 - - 1.45
KN2号 500 60 25 - 2 49 25 -
※3
- 2.35

※ 電解質の単位: mEq/L
※1 ソリタ-T2号: 添加物にL-乳酸8mEq/Lを含むので乳酸濃度は28mEq/L。 ※2 P 10mmol/Lを含有。
※3 KN2号: P 6.5mmol/Lを含有。

💡 2号液(脱水補給液)の各論・使い分け

  • 特徴: 1号液よりもナトリウムを減らし、代わりにカリウムを少し(20mEq/L程度)加えた点滴です。細胞の中まで水分を補給しやすいように設計されています。
  • どんな時に使うの?: 嘔吐や下痢などで、細胞の水分と一緒にカリウムも失われたような脱水時に使われる想定で作られました。ただし、現在は1号液や3号液で代用されることが多く、現場で使われる機会は減っています。

🌟 3号液 (維持液)

人間の1日に必要な水分量(1,500〜2,000ml)を点滴すると、生きていくのに必要な成分(電解質)もバランス良く補給できる、とても便利な点滴です。

製剤名 容量
(mL)
Na K Ca Mg Cl 乳酸 酢酸 リン酸 糖質
(%)
ソリタ-T3号
後発:ヒシナルク3号
200
500
35 20 - - 35 20 - - 4.3
KN3号 200
500
50 20 - - 50 20 - - 2.7
EL-3号 500 40 35 - - 40 20 -
※1
- 5
ヴィーン3G 200
500
45 17 - 5 37 - 20 10 5
リプラス3号 200
500
40 20 - - 40 20 - - 5
フィジオゾール3号 500 35 20 - 3 38 20
※2
- - 10
ソリタ-T3号G 200
500
35 20 - - 35 20 - - 7.5
KNMG3号 500 50 20 - - 50 20 - - 10
フィジオ35
GE:グルアセト35
250
500
35 20 5 3 28 - 20
※3
- 10
トリフリード 500
1000
35 20 5 5 35 - 6
※4
- 10.5

※ 電解質の単位: mEq/L
※1 EL-3号: P 8mmol/L
※2 フィジオゾール3号: 添加物としてL-乳酸を含有
※3 フィジオ35: グルコン酸 5mEq/L、P 10mmol/L、添加物にクエン酸水和物含有
※4 トリフリード: クエン酸 14mEq/L、P 10mmol/L、Zn 5μmol/L

💡 3号液(維持液)の各論・使い分け

  • 特徴: 人間が1日に必要とする水分(約1,500〜2,000mL)と電解質(ナトリウム、カリウムなど)のバランスに一番近く配合されている、とても便利な点滴です。
  • どんな時に使うの?: 手術後や病気などで 「口から食事や水分が全くとれない患者さんの、毎日の水分・栄養補給」 として、病棟で最も頻繁に使われる代表的なお薬です。

🛏️ 4号液 (術後回復液)

塩分などが少なく、真水(自由水)に近い成分が多い点滴です。手術後の回復期などに使われる想定でしたが、こちらも現在ではあまり使われていません。

製剤名 容量
(mL)
Na K Ca Mg Cl 乳酸 酢酸 リン酸 糖質
(%)
ソリタ-T4号 200
500
30 - - - 20 10 - - 4.3
ソルデム6 200
500
30 - - - 20 10 - - 4
KN4号 500 30 - - - 20 10 - - 4

※1 電解質の単位: mEq/L

💡 4号液(術後回復液)の各論・使い分け

  • 特徴: ナトリウムなどの電解質が非常に少なく、真水(自由水)に近い成分構成の点滴です。
  • どんな時に使うの?: 手術後など、体が塩分(ナトリウム)を溜め込みやすくなっている時期の水分補給として作られました。しかし、現在では「電解質が少なすぎて血液が薄まりすぎる(低ナトリウム血症)リスクがある」とされており、使われることはほとんどありません。

3️⃣ ③ 5%ブドウ糖液 (自由水補給液)

ナトリウムなどの成分を含まず、ブドウ糖だけが含まれた点滴です。体の中でブドウ糖が使われると、結果的にただの「水」となって体全体に行き渡ります。

製剤名 容量
(mL)
Na K Ca Mg Cl 乳酸 酢酸 リン酸 糖質
(%)
5%ブドウ糖液 - - - - - - - - - 5

※1 電解質の単位: mEq/L

💡 5%ブドウ糖液の各論・使い分け

  • 特徴: ナトリウムなどの電解質が一切入っておらず、ブドウ糖だけが溶けている点滴です。体内でブドウ糖がエネルギーとして消費されると、最終的にただの「水(自由水)」になります。
  • どんな時に使うの?: お茶や水が飲めず、体から水分だけが極端に減ってしまった時(高張性脱水)に使われます。また、抗生物質など他のお薬を溶かして点滴で体に入れるときの「溶解液」 としても大活躍します。

💡 おまけ:ここがポイント!各成分の配合意義(薬剤師の視点)

輸液に含まれる様々な成分は、「何が入っていて、その成分は何のために存在しているのか」を知ることで、輸液の違いがぐっと理解しやすくなります。

輸液成分の目的一覧表

成分 現有目的 臨床上の意味
Na⁺(ナトリウム) 細胞外液量の維持 循環血液量の確保、脱水補正
Cl⁻(塩化物) 電気的中性の維持、Na⁺とのバランス 不足すると代謝性アルカローシス、大量投与で高Cl性アシドーシス
K⁺(カリウム) 細胞内主要電解質の補充 神経・筋機能の維持、不整脈予防
Ca²⁺(カルシウム) 生理機能の維持 心筋収縮、血液凝固、神経伝達
Mg²⁺(マグネシウム) 酵素反応・神経筋機能の維持 低Mg補正、不整脈予防
乳酸 重炭酸(HCO₃⁻)の前駆体 主に肝臓で代謝され、酸塩基平衡 を維持
酢酸 重炭酸(HCO₃⁻)の前駆体 肝臓以外の組織でも代謝され、より速やかに酸塩基平衡 を維持
重炭酸(HCO₃⁻) 緩衝作用そのもの 代謝性アシドーシス の補正
ブドウ糖
※含有製剤のみ
エネルギー供給、細胞内への水分移行 飢餓予防、自由水補給
pH調節剤
※塩酸、水酸化Naなど
製剤の安定化 患者の酸塩基平衡への影響はほぼない

目的別の3つのグループ

上の表をさらに大きく3つのグループに分けると、輸液の目的がすっきり整理できます。

①「量を補う成分」

Na⁺、Cl⁻、K⁺、Ca²⁺、Mg²⁺ 👉 脱水や電解質異常を補正するために配合されています。

②「酸塩基平衡を整える成分」

乳酸、酢酸、重炭酸 👉 血液が酸性に傾くの(アシドーシス)を防いだり、補正したりするために配合されています。

③「その他の目的」

ブドウ糖 👉 エネルギー・自由水補給 pH調節剤 👉 製剤の品質維持(点滴液の中で成分が変質するのを防ぐ)


💡 薬剤師的な「処方意図の読み方」

薬剤師として輸液を見たときに、**「この成分は何を補いたいのか?」**と考えると、医師の処方意図がとても読みやすくなります。

例えば、等張性輸液(細胞外液補充液)なら以下のように解釈できます。

  • 生理食塩水:NaとClだけを補いたい(シンプルに水分と塩分だけ)
  • 乳酸リンゲル液(ラクテックなど):細胞外液 + 乳酸による緩衝作用が欲しい
  • 酢酸リンゲル液(ヴィーンFなど):細胞外液 + 酢酸による緩衝作用が欲しい(肝機能低下時など)
  • 重炭酸リンゲル液(ビカネイトなど):細胞外液 + 直接的なアシドーシス補正が欲しい

実務では、最終的に以下の3つに分解して考えると、ほぼすべての等張性輸液の目的を説明できるようになります。

  1. 水分を補いたいのか
  2. 電解質を補いたいのか
  3. 酸塩基平衡を整えたいのか

この3つの視点を持つだけで、現場での輸液の理解度が格段に上がります!

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