「薬が足りない!」疑う前にやるべき事実確認と患者さんへの寄り添い方
夕方の忙しい時間帯に一本の電話。「昨日もらった胃薬が1シート足りないんだけど!」と患者さんからのお怒りの声でした。私はすぐに調剤録と在庫を確認。在庫はぴったり合っており、監査時の写真記録にも間違いなく全量写っていました。「お調べしましたが、こちらでは間違いなくお渡ししております。在庫も合っていますので…」とお伝えしたところ、「じゃあ私が嘘をついているって言うのか!」と大激怒されてしまいました。
「薬が足りない」「入っていなかった」というお問い合わせは、非常にデリケートな対応が求められます。 薬局側は「絶対に間違えていない」という記録(在庫・写真・複数人監査)があるため、ついそれを盾にしてしまいがちですが、それが患者さんの感情を逆撫でする原因になります。
🚫 1. 対立を生むNGな対応
事実確認は重要ですが、伝え方を間違えると「患者さん vs 薬局」という対立構造になってしまいます。
- ❌「在庫は合っています」「記録に残っています」とすぐに主張する
- なぜNGなのか: 「私たちは悪くない、あなたが無くしたんでしょう」というメッセージに聞こえ、患者さんのプライドを傷つけます。
- ❌「どこかに落としませんでしたか?」「カバンの中をよく見ましたか?」と疑う
- なぜNGなのか: まるで尋問されているように感じさせ、さらなる反発を招きます。
⭕ 2. 「一緒に解決する」ための対応ステップ
患者さんは薬局を騙そうとしているわけではなく、単に「薬がなくて困っている」「不安だ」という状態です。対応の目的は「どちらが正しいか決めること」ではなく、「患者さんの不安を解消すること」です。
Step 1: 困っている状況に共感し、不便を詫びる
まずは、薬がなくて困惑している患者さんの状況を受け止めます。
「お薬が足りないとのこと、大変ご不便とご心配をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません。すぐにお調べいたします。」 (※「渡し忘れたこと」を謝るのではなく、「不便をかけている現状」に対して謝罪します)
Step 2: 事実確認は「薬局内の確認」として伝える
在庫や記録を調べる際も、患者さんを疑うニュアンスを出さないように気をつけます。
「念のため、薬局の在庫や調剤時の記録を一度確認させていただけますでしょうか。折り返しお電話いたします。」
Step 3: 結果の伝え方と代替案の提示
もし薬局の記録上は正しくお渡しできている場合でも、その事実を突きつけるのではなく、控えめに伝えます。
「お待たせいたしました。薬局内の在庫や記録を確認したのですが、今のところお渡し漏れの記録が見当たらず……私どもの確認不足でお渡しできていない可能性もございます。今お手元にお薬がなくお困りかと思いますので、すぐに不足分をご自宅へお届け(またはご郵送)の手配をさせていただきたいのですが、いかがでしょうか?」
💡 3. なぜ「薬局のミスかもしれない」という余白を残すのか
記録上は100%薬局が正しくても、「絶対に渡しました」と言い切るのは危険です。 患者さんが後から家の中で薬を見つけた場合、薬局側が強硬な態度をとっていたら「見つかりました」と言い出しづらくなり、気まずくて別の薬局へ変えてしまうかもしれません。
対応の際は「薬局の袋の隅や、エコバッグの中に紛れ込んでしまうこともよくあるんです。もし後からヒョッコリ出てきたら、次回来られた時にでも教えてくださいね」と、患者さんが勘違いしていた場合の「逃げ道(言い訳しやすい状況)」を作ってあげることがコミュニケーションの高等テクニックです。
📝 4. まとめ:白黒つけることより信頼関係
「薬が足りない」というトラブルは、事実の追求よりも、患者さんが安心して薬を飲める状態をいち早く作ることが最優先です。
- 窓口での一緒に確認:数が多い薬やシートが分かれる場合は、お渡し時に患者さんと一緒に「1,2,3...」と数えて確認する(最大の防御策)。
- 事実ではなく感情への謝罪:「私どもの手違いで…」と断言せず、「ご不安にさせてしまい申し訳ありません」と寄り添う。
- 不足分は速やかに補填する:患者さんの治療が滞らないよう、不足分の薬をいち早く届ける算段を第一に考える。
「薬が足りない!」と言われたら、ピンチではなく「薬局の誠実さを見せるチャンス」と捉え、対立を避けるアサーティブなコミュニケーションを心がけましょう。