「薬を減らしたのに高くなった!」残薬調整の手数料トラブルを防ぐには
お薬の準備が終わり、患者さんに金額をお伝えしたときのこと。「あっ、そういえば家にこの薬まだたくさん余ってるから、今回は減らしてくれない?」とご要望がありました。私は「わかりました!」と答え、すぐに医師へ疑義照会を行い、無事に処方日数を減らすことができました。 しかし、薬局の正当なルールとして「調剤時残薬調整加算」を算定した結果、減らしたお薬の金額よりも加算の点数の方が高くつき、最初の会計時よりも値段が上がってしまいました。患者さんからは「薬を減らしたのになんで高くなるの!ぼったくりじゃない!」と猛烈なクレームを受けてしまいました…。
「薬を減らしたのに、支払うお金が増える」というのは、医療保険の仕組みを知らない患者さんからすれば、到底納得できない事態です。 今回は、薬剤師が良かれと思って行った残薬調整がクレームに発展してしまう原因と、その防ぎ方について解説します。
🚫 1. なぜクレームになってしまったのか?
このケースにおける最大の失敗は、「金額が上がる可能性があること」を事前に伝えていなかったことです。
患者さんの心理としては、「薬の量が減る=絶対に安くなる」という確固たる思い込みがあります。 それなのに、後出しで「調整のための手数料(加算)がかかりました」と言われても、「最初から言ってくれれば減らさなかったのに!」「薬局が儲けるために勝手に手数料を取った」と捉えられてしまいます。
正当な加算(調剤時残薬調整加算など)を算定すること自体は全く悪くありません。問題は 「情報提供のタイミング」 にあります。
⭕ 2. トラブルを防ぐための「事前の声かけ」
残薬調整の依頼を受けた際、すぐに行動に移す前に、必ず 「事前のアナウンス(同意の取得)」 を行うことがアサーションの基本です。
Step 1: 依頼を受け止めつつ、制度について説明する
まずはご要望を受け止め、その手続きに特別な作業(医師への確認など)が発生することを伝えます。
「お家に残っているお薬があるのですね、教えていただきありがとうございます。お薬を減らすためには、私から病院の先生に連絡をして許可をもらう必要があります。」
Step 2: 金額について「先に」注意喚起する(重要)
ここが最も重要です。薬が減る金額よりも、手続きの手数料(加算)が高くなる可能性があることを疑義照会をする前に伝えます。
「先生にご相談して日数を減らすことは可能なのですが、実は国の制度で、『お薬の無駄をなくすための調整の手数料』が数百円ほど(※実際の自己負担額を提示)かかってしまいます。 今回はお薬の単価がお安いため、もしかすると最初にお伝えした金額よりも、少し高くなってしまうかもしれませんが、よろしいでしょうか?」
Step 3: 患者さんに選んでもらう
事実を伝えた上で、どうするかは患者さんに決めてもらいます。
「このまま今回も全量お持ち帰りいただくこともできますが、どうなさいますか?」
💡 3. クレームになってしまった後の対応
もし、事前の説明を忘れてクレームになってしまった場合は、どうすればよいでしょうか。
- ❌ NGな対応:「これは国の決まりなので」「点数で決まっているので」と正論を押し付ける。
- ⭕ 改善対応: まずは事前の説明不足を謝罪し、誠意を見せます。
「事前に『調整の手数料がかかる』というご説明が漏れており、大変申し訳ございませんでした。薬を減らしたのに高くなってしまい、驚かれますよね。実はお薬の無駄を防ぐために病院へ連絡して調整を行った場合、国の決まりでこのような手数料(加算)をいただくことになっておりまして……ご説明が足りず申し訳ありませんでした。」
📝 4. まとめ:親切心とルールの板挟みを防ぐ
薬剤師としては「患者さんのために残薬を調整してあげよう」という親切心で動いたのに、怒られてしまうのはとても悲しいことです。
- 「後出しジャンケン」をしない:加算がつく、金額が変わるなど、患者さんにとって不利益になる可能性がある情報は、必ず作業を始める前に伝える。
- 具体的な金額の目安を伝える:「高くなります」だけでなく、「〇〇円くらい手数料がかかりますが」と具体的に伝えることで、患者さんが判断しやすくなる。
- 最終決定権は患者さんに:説明した上で、「どうしますか?」と選択を委ねることで、「自分で決めた」という納得感を持ってもらう。
「ルールだから仕方ない」と後から伝えるのではなく、「こういうルールがありますが、どうしますか?」と先に提案することが、患者さんとの信頼関係を守るための大切なコミュニケーションです。