ホーム>雑談・その他>Artz(アーツ)の基準とは?重症度判定の考え方
目次

🔥 Artzの基準ってなに?薬剤師が知っておくべき熱傷重症度の評価法

【薬剤師の「はっ」とした経験】
ある日、近所の皮膚科から「アズノール軟膏」の処方箋を持った患者さんがいらっしゃいました。天ぷら油が跳ねてしまい、手の甲から指先にかけてやけどを負ってしまったとのことです。

面積としては小さかったため、「お大事にしてくださいね」と普段通りに軟膏をお渡ししました。しかし後日、その患者さんは手のひきつれ(瘢痕拘縮)などのリスクがあるため、総合病院へ紹介されたと知りました。
実は「Artzの基準」において、手や顔などの特殊部位はやけどの面積にかかわらず「重症」として専門的な治療が推奨されるケースがあるのです。面積の小ささだけで軽症と判断してしまった自分のアセスメント不足を痛感した出来事でした。

「やけど=外用薬を塗るだけ」と考えてしまいがちですが、広範囲の熱傷は全身管理が必要な「急性疾患」です。今回は、医療現場で最も広く使われている熱傷重症度判定「Artz(アーツ)の基準」について、薬剤師の視点で分かりやすくまとめていきます!


🧐 1. 熱傷の重症度を左右する「3つの要素」

熱傷の重症度は、単に「痛そうかどうか」ではなく、以下の3つの要素を組み合わせて客観的に評価します。

① 熱傷深度
どのくらいの深さまで組織が損傷しているか(I度〜III度)
② 熱傷面積
体表面積の何%に熱傷が及んでいるか(TBSA)
③ 合併症・部位
吸入熱傷の有無や、顔面・手足・会陰部などの特殊部位か

薬剤師として特に意識したいのが、「熱傷面積(TBSA)」です。面積が広ければ広いほど、皮膚からの水分喪失が激しくなり、輸液療法の必要性が高まるからです。


📏 2. 面積を算出するための「9の法則」と「5の法則」

Artzの基準を適用する前に、まずは熱傷面積を算出する必要があります。現場でよく使われる手法を整理しましょう。

🖐️ ① 9の法則(成人)

成人の体を「9%」の倍数で区切って計算する方法です。

部位 面積の割合(成人)
頭部・頸部 9%
上肢(片腕全体) 9% (両腕で18%)
下肢(片脚全体) 18% (両脚で36%)
体幹(前面) 18%
体幹(背面) 18%
会陰部 1%

👶 ② 5の法則(小児)

小児は頭が大きく足が短いため、数値が変わります。

部位 面積の割合(乳幼児)
頭部・頸部 20%
体幹(前面・背面各) 20% (計40%)
上肢(片腕全体) 10% (両腕で20%)
下肢(片脚全体) 10% (両脚で20%)
💡 豆知識:手掌法(しゅしょうほう)
患者さんの「指を閉じた手のひら全体」の面積を、体表面積の約1%として計算する方法です。不整形な熱傷や、小さな熱傷が点在している場合に非常に便利です。

📊 3. 本題:Artzの基準(Artz's Criteria)

Artzの基準は、これら「深度」と「面積」を組み合わせて、軽症・中等症・重症(入院/転送が必要)を判定する指標です。

【Artzの基準 判定一覧】

重症度 熱傷の状態(以下のいずれかに該当) 治療場所の目安
重症熱傷 ・Ⅱ度熱傷が体表面積の30%以上(小児・高齢者は20%以上)
・Ⅲ度熱傷が体表面積の10%以上(小児・高齢者は5%以上)
・顔面、手、足、会陰部などの特殊部位の熱傷
・気道熱傷(吸入熱傷)の疑い
・軟部組織の広範な損傷や骨折の合併
・電撃傷、重篤な化学熱傷
三次救急・熱傷センター
(専門施設での高度な全身管理が必要)
中等症熱傷 ・Ⅱ度熱傷が15〜30%(小児・高齢者は10〜20%)
・Ⅲ度熱傷が10%未満
(ただし顔面、手、足、会陰部などを除く)
一般病院(二次救急)
(入院による輸液管理・創傷治療が望ましい)
軽症熱傷 ・Ⅱ度熱傷が15%未満(小児・高齢者は10%未満)
・Ⅲ度熱傷が2%未満
外来治療(初期救急)
(通院での外用療法と経過観察)

※年齢因子(小児や高齢者)、基礎疾患の有無によっても重症度の評価は引き上げられます。


🔢 4. もう一つの重要指標「バーンインデックス (BI)」

日本の熱傷診療でArtzの基準と併せて頻用されるのが、バーンインデックス(Burn Index)です。これは「III度熱傷」の重みを2倍にして計算する指標です。

バーンインデックス (BI) の計算式
BI = (II度熱傷面積 × 1/2) + (III度熱傷面積)
  • BI 10〜15以上:重症と判定され、生命の危険性が高まります。
  • 熱傷予後指数(PBI) = 年齢 + BI が100を超える場合(年齢加算BI)、予後不良とされます。

💊 5. 薬剤師が実務で活かすポイント

処方箋から熱傷の重症度を推測できれば、服薬指導の質がグッと上がります。

① 外用薬の選択意図を読み取る

重症度や受傷からの経過(急性期か、肉芽形成期か)によって、選択される外用薬が変わります。

薬剤名 特徴と使用タイミング
ゲーベンクリーム 強力な殺菌作用。水分含有量が多く、感染リスクの高い深い熱傷(II度〜III度)の初期によく使われます。※銀アレルギー注意
アズノール軟膏 消炎作用がメイン。比較的浅い熱傷(I度〜浅在性II度)や、治りかけの時期に。
プロスタンディン軟膏 血流改善作用。壊死組織の分離や肉芽形成を促進したい時期に。
バラマイシン軟膏 抗生物質配合。二次感染の予防・治療に。

② 全身状態への目配り

Artzの基準で「中等症」以上に該当しそうな広範囲熱傷の場合、外用薬だけでなく以下の点を確認しましょう。

  • 脱水のサイン: 「尿はしっかり出ていますか?」「口の渇きはどうですか?」といった確認。
  • 感染症の徴候: 患部の悪臭、膿、急な発熱がないか。
  • 栄養状態: 皮膚の再生にはタンパク質やビタミンが必要です。食事が摂れているか確認を。

🌿 6. まとめ:基準を知れば「薬」の先が見える

熱傷の処方箋が来たとき、私たちはつい「どの軟膏をどれくらい混ぜるか」「在庫はあるか」に目を奪われがちです。

しかし、Artzの基準バーンインデックスという物差しを持っておくことで、「この面積なら全身性の脱水に注意が必要だな」「この部位なら瘢痕拘縮(ひきつれ)のリスクがあるからリハビリの話が出るかも」といった、一歩進んだアセスメントが可能になります。

🚨 薬剤師の注意点!
もし外来で「明らかに広範囲(成人の手のひら15枚分以上など)」の熱傷患者さんが、外用薬のみの処方でふらつきながら来局された場合は、脱水によるショックの可能性も否定できません。速やかに疑義照会や受診勧奨を検討する勇気も必要です。

患者さんの皮膚だけでなく、「全身」を支えられる薬剤師を目指して、これらの基準をぜひ日々の業務に役立ててくださいね!

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