ホーム>
目次

slug: "heel-pain-pharmacist-guide" title: "【現役薬剤師が解説】かかとが痛いと言われたら?考えられる原因と薬剤師の対応" date: "2026-07-12" category: "ツール" tags: ["かかと痛", "足底筋膜炎", "アキレス腱炎", "薬剤師", "鑑別診断", "セルフケア"] published: false description: "「かかとが痛い」と訴える患者さんに対し、薬剤師が鑑別すべき原因と、それぞれの原因に応じた対応策、セルフケア、受診勧奨のポイントを解説します。" summary: "かかとの痛みを訴える患者さんに対応する際、薬剤師がまず考えるべき原因は多岐にわたります。この記事では、足底筋膜炎やアキレス腱炎などの代表的な疾患から、薬剤性のものまで、原因を特定し、適切なアドバイスや受診勧奨を行うための知識を薬剤師向けに解説します。"

🦶 かかとが痛いと言われたら?薬剤師が考えたい原因

薬局やドラッグストアで「かかとが痛いんです」と相談された経験は、多くの薬剤師が一度はあるのではないでしょうか。かかとの痛みは、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。患者さんの訴えに的確に対応するためには、痛みの原因を多角的に捉え、適切なアドバイスや必要に応じた受診勧奨を行うことが重要です。

この記事では、薬剤師が「かかとが痛い」という訴えを受けた際に、鑑別すべき代表的な原因と、それぞれの原因に対する薬剤師としての対応、セルフケア、そして受診勧奨のポイントについて、実務で役立つ情報をお届けします。

⚡️ 1. 最も頻繁に遭遇するかかとの痛み:足底筋膜炎

かかと、特に足裏の痛みの原因として最も一般的で、薬剤師がまず疑うべき疾患の一つが「足底筋膜炎(そくていきんまくえん)」です。

【薬剤師の疑問】
「朝起きて、一番に体重をかけた時が一番痛い」というのは、足底筋膜炎の典型的な症状ですが、患者さんによっては日中も痛みが続いたり、安静にしていると楽になったりすることもあります。痛みの強さやタイミングのバリエーションを理解しておくことが、患者さんの訴えを正確に把握する上で重要です。

足底筋膜炎とは?

足底筋膜は、かかと(踵骨)から足の指の付け根まで伸びる、扇状の厚い線維性の膜です。歩行時や走行時に足裏のアーチを支え、衝撃を吸収するクッションの役割を担っています。この足底筋膜に over-use(使いすぎ)や負担が継続的にかかることで炎症が起こり、痛みが生じるのが足底筋膜炎です。

主な症状

  • 特徴的な痛み: 朝起きて最初の一歩、または長時間座っていた後などに、かかとの内側(骨の出っ張り部分)に鋭い痛みが生じます。
  • 痛みの変化: 歩き始めは痛むものの、しばらく歩くと痛みが軽減することが多いですが、活動量が増えると再び痛みが強くなる傾向があります。
  • 圧痛: 痛む部位を押すと、強い圧痛(押すと痛むこと)があります。

薬剤師が提供できる対応

  • セルフケアの指導:
    • 安静: 痛みが強い時期は、長時間の歩行や立ち仕事を避け、患部を休ませることが重要です。
    • ストレッチ: アキレス腱や足底筋膜のストレッチは、痛みの軽減と再発予防に効果的です。タオルギャザー運動なども推奨されます。
    • アイシング: 運動後や痛みが強い時に、患部を冷やすことで炎症を抑えます。
    • 靴の選択: クッション性の高い靴を選び、ヒールの高い靴や底の薄い靴は避けるようアドバイスします。インソールの使用も有効な場合があります。
  • 市販薬の選択:
    • 消炎鎮痛剤(外用薬): ロキソニンSゲル、フェルビナク配合の湿布など、患部に直接塗布するタイプの外用鎮痛消炎剤が痛みの緩和に役立ちます。
    • (長期的な視点として) 漢方薬の「疎経活血湯(そけいかっけつとう)」や「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしゃくやくかごしゅゆしょうきょうとう)」などが、血行促進や痛みの緩和に用いられることがあります。ただし、これらは医師の処方箋がなくても購入できる場合でも、長期使用には注意が必要です。

受診勧奨のポイント

  • 痛みが数週間以上続く場合
  • 痛みが強く、日常生活に大きな支障が出ている場合
  • 腫れや熱感を伴う場合
  • 足の変形がある場合
  • 転倒など、明らかな外傷後に痛みが出た場合
根拠となる情報元の詳細を見る引用元文章: 足底筋膜炎は、足底の筋膜に過度の負荷がかかることで炎症が生じ、かかとや足裏に痛みが生じる疾患です。特に朝一番の歩き始めに痛むのが特徴的であり、安静にしていると軽減する傾向がありますが、活動量が増えると再燃することがあります。治療としては、安静、ストレッチ、アイシング、適切な靴の選択などの保存療法が基本となります。消炎鎮痛薬の外用剤や、症状によっては漢方薬が用いられることもあります。数週間以上痛みが続く場合や、重度の痛みを伴う場合は、整形外科医の診察が必要です。
参照元: 足底筋膜炎|公益社団法人 日本整形外科学会

🚶‍♂️ 2. 運動量が多い人に多い:アキレス腱炎・アキレス腱付着部炎

かかとの後方、アキレス腱周辺の痛みを訴える場合は、「アキレス腱炎(あきれつけんえん)」や「アキレス腱付着部炎(あきれつけんふちゃくぶえん)」の可能性が考えられます。

アキレス腱炎・アキレス腱付着部炎とは?

アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)とかかと(踵骨)をつなぐ腱です。このアキレス腱に炎症が起きるのがアキレス腱炎、またはアキレス腱がかかとの骨に付着する部分に炎症が起きるのがアキレス腱付着部炎です。ランニングやジャンプなど、アキレス腱に繰り返し負担がかかるスポーツをする人に多く見られます。

主な症状

  • 痛みの部位: かかとのすぐ上、アキレス腱に沿って痛みが生じます。
  • 腫れ・熱感: 炎症が強い場合、アキレス腱周囲が腫れたり、熱を持ったりすることがあります。
  • 運動時の痛み: 特に運動中や運動後に痛みが増強します。
  • 腱の硬さ: 朝や運動前に、アキレス腱が硬く感じられることがあります。

薬剤師が提供できる対応

  • セルフケアの指導:
    • 安静: 痛みが強い間は、運動を中止し、患部を休ませることが最優先です。
    • アイシング: 運動後や痛みが強い時に、患部を冷やします。
    • ストレッチ: アキレス腱のストレッチは、柔軟性を高め、再発予防に有効ですが、痛みが強い時期は無理に行わないように指導します。
    • 靴の選択: かかとをしっかりとホールドできる靴を選び、クッション性のあるものを使用します。
  • 市販薬の選択:
    • 消炎鎮痛剤(外用薬): 湿布やゲル剤などが、痛みの緩和に役立ちます。

受診勧奨のポイント

  • 痛みが強く、歩行が困難な場合
  • 腫れや熱感が顕著な場合
  • アキレス腱が切れたような感覚(「ブチッ」という音)があった場合(アキレス腱断裂の可能性)
  • 数週間以上痛みが改善しない場合
根拠となる情報元の詳細を見る引用元文章: アキレス腱炎は、アキレス腱の炎症であり、過度な負荷や使いすぎによって引き起こされます。アキレス腱付着部炎は、アキレス腱がかかとの骨に付着する部分の炎症です。どちらもランニングやジャンプ動作の多いスポーツ選手に多くみられます。症状としては、アキレス腱周辺の痛み、腫れ、運動時の疼痛、腱の硬さなどが挙げられます。治療は、安静、アイシング、ストレッチ、適切な靴の選択などの保存療法が中心となります。重症の場合や、アキレス腱断裂の疑いがある場合は、速やかな専門医の診察が必要です。
参照元: アキレス腱炎・アキレス腱付着部炎|公益社団法人 日本整形外科学会

👣 3. その他の注意すべき原因

上記以外にも、かかとの痛みを引き起こす原因はいくつか考えられます。

3-1. 踵骨棘(しょうこつきょく)

踵骨棘は、かかとの骨(踵骨)のとがった骨棘(こつきょく:骨のトゲのようなもの)のことです。これは、足底筋膜炎が長期間続いた結果として生じることが多いですが、骨棘自体が直接痛みを引き起こしているとは限りません。痛みの原因は、多くの場合、骨棘の周囲で生じている炎症(足底筋膜炎など)にあると考えられています。

【薬剤師の対応】 レントゲン検査などで踵骨棘が指摘された場合でも、痛みの根本原因は足底筋膜炎であることが多いため、対応としては足底筋膜炎に準じます。セルフケア指導や、必要に応じて市販の消炎鎮痛剤の使用を検討します。

根拠となる情報元の詳細を見る引用元文章: 踵骨棘とは、踵骨(かかとの骨)の底面にできる骨棘(骨のとげ)のことです。これは足底筋膜炎の合併症として見られることがありますが、必ずしも踵骨棘自体が痛みの原因とは限りません。多くの痛みの原因は、踵骨棘の周囲の炎症、特に足底筋膜炎にあると考えられています。治療は足底筋膜炎に準じ、保存療法が中心となります。
参照元: かかとの痛み(踵部痛)|大阪大学医学部附属病院 整形外科

3-2. 薬剤性の副作用

まれに、特定の薬剤の副作用として、かかとや関節に痛みが生じることがあります。特に注意したいのは、以下の薬剤です。

  • ニューキノロン系抗菌薬: シプロフロキサシン、レボフロキサシンなど。腱炎や腱断裂のリスクが報告されています。
  • スタチン系高脂血症治療薬: アトルバスタチン、ロスバスタチンなど。筋肉痛や関節痛を引き起こすことがあります。
  • ビスフォスフォネート系骨粗鬆症治療薬: アレンドロネートなど。非典型的な大腿骨骨折や顎骨壊死のリスクとともに、関節痛や筋肉痛が副作用として報告されています。

【薬剤師の対応】 患者さんがこれらの薬剤を服用中に、かかとの痛みを訴えた場合は、副作用の可能性を考慮し、処方医への確認(疑義照会)を検討します。自己判断での中止や変更はせず、必ず医師の指示を仰ぐように指導してください。

3-3. その他の原因

  • 踵部脂肪褥(しょうぶしぼうじょく): かかとの下の脂肪体が薄くなり、クッション性が低下して痛みが生じる状態。高齢者に多く見られます。
  • 踵部滑液包炎(しょうぶかつえきほうえん): アキレス腱と踵骨の間にある滑液包が炎症を起こしたもの。
  • 疲労骨折: 過度な負荷が繰り返されることによる、かかとの骨(踵骨)の微細な骨折。
  • 神経障害: 坐骨神経痛など、足への神経圧迫が原因でかかと周辺にしびれや痛みを伴うことがあります。

これらの原因は、自己判断での対応が難しいため、症状が続く場合や原因が特定できない場合は、速やかに医療機関への受診を勧めることが重要です。


💡 まとめ:原因を推測し、適切な情報提供と受診勧奨を

かかとの痛みを訴える患者さんに対して、薬剤師ができることは、まず痛みの原因を推測し、適切なセルフケア方法や市販薬の情報提供を行うことです。

  • 足裏の痛み: 朝一番の痛みが顕著なら「足底筋膜炎」を疑う。
  • かかとの後方の痛み: 運動量が多い方なら「アキレス腱炎」を疑う。
  • 服用中の薬剤: ニューキノロン系抗菌薬やスタチン系薬剤などを服用していないか確認する。

いずれの場合も、症状が長引く場合や重度の場合、または原因が特定できない場合は、無理な自己判断は避け、速やかに整形外科などの専門医の診察を受けるよう丁寧にアドバイスすることが、薬剤師としての重要な役割となります。患者さんの「歩きやすい生活」を取り戻すための一助となれるよう、日々の業務で知識をアップデートしていきましょう。

← 前の記事次の記事 →

関連記事

← ホームに戻る