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お腹が張るようになったら?便秘以外の原因とは

【現場のリアル:その「便秘薬」で大丈夫?】
先日、薬局で「最近ずっとお腹が張って苦しい。市販の酸化マグネシウムを飲んでいるけれど改善しない」という患者様が相談に来られました。私は反射的に「腸の動きが鈍いのかもしれませんね」と整腸剤を追加しようとしましたが、ふと違和感を覚えました。お腹を触診するわけにはいきませんが、問診を深掘りすると「食事の直後からガスが溜まる」「おならが止まらない」という症状がメインであることが判明。

結果として、これは単なる便秘ではなく、食事内容や腸内細菌叢の乱れ(SIBOなど)が疑われるケースでした。便秘だと思い込んで便秘薬を漫然と処方・推奨し、かえって腸内ガスを増長させてしまう…そんな失敗を避けるために、今回は「便秘以外の腹部膨満感」について整理します。

🔍 お腹の張り(腹部膨満感)のメカニズム

お腹が張る主な原因は、**「腸管内へのガス貯留」または「内臓知覚過敏」**です。私たちは普段、無意識に空気を飲み込み(呑気症)、さらに腸内細菌が食物を分解する過程でガスが発生します。このバランスが崩れると、腹部膨満感として自覚されます。

根拠となる情報元の詳細を見る引用元文章: 腹部膨満感は、消化管内のガス貯留や内臓知覚過敏が主な原因とされています。空気嚥下(呑気症)や腸内細菌による食物残渣の発酵がガス産生に関与します。
参照元: おなかの張り(腹部膨満感) - 日本消化器内視鏡学会

🛑 1. 便秘以外に疑うべき「隠れた原因」

便秘薬を使っても改善しない場合、以下の疾患や要因が隠れていないか疑う必要があります。

① SIBO(小腸内細菌増殖症)

小腸で細菌が異常に繁殖する状態です。特に、**「食べた直後に強く張る」「食後の腹痛や下痢・便秘を繰り返す」**のが特徴です。

  • 薬剤師の視点: PPI(胃酸抑制薬)の長期服用は胃酸による殺菌作用を弱め、SIBOのリスク因子になり得ると考えられています。
根拠となる情報元の詳細を見る引用元文章: 小腸内細菌増殖症(SIBO)は、小腸に過剰な細菌が存在する状態を指します。症状として、食後の腹部膨満感、腹痛、下痢などが挙げられます。胃酸分泌抑制薬(PPI)の長期使用は、胃酸による殺菌作用の低下を招き、SIBOの発症リスクを高める可能性があります。
参照元: 小腸内細菌過増殖症(SIBO)とは | 一般社団法人日本医療予防協会

② 過敏性腸症候群(IBS)ガス型

ストレス等により腸が過敏になり、わずかなガスでも苦痛を感じる状態です。

  • 薬剤師の視点: 「緊張するとお腹が張る」という訴えがあれば、高FODMAP食(ガスを発生させやすい食物)の制限や、医師による抗不安薬・整腸剤の検討が必要な場合があります。
根拠となる情報元の詳細を見る引用元文章: 過敏性腸症候群(IBS)は、器質的疾患がないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感を伴う便通異常が続く状態です。ガス型では腹部膨満感や放屁過多が主な症状で、ストレスが症状を悪化させることがあります。高FODMAP食の制限や、症状に応じて消化管運動機能改善薬、整腸剤、抗不安薬などが用いられます。
参照元: 過敏性腸症候群の診断と治療 -日本における現状と課題-

③ 薬剤性腹部膨満感

案外見落としがちなのが、服用中の薬による副作用です。

原因薬のグループ 具体的な薬剤例 膨満感のメカニズム
抗コリン薬 抗うつ薬、抗ヒスタミン薬 副交感神経抑制による腸管蠕動の低下
オピオイド 医療用麻薬、コデイン 腸管運動の抑制と水分吸収促進
糖アルコール含む薬 便秘薬(ラクツロース等) 大腸での発酵によるガス産生増加
PPI(胃酸抑制薬) オメプラゾール等 胃内pH上昇による菌の過剰増殖
根拠となる情報元の詳細を見る引用元文章: 薬剤による腹部膨満感は多岐にわたります。抗コリン作用を持つ薬剤(三環系抗うつ薬、抗ヒスタミン薬など)は腸管の蠕動運動を抑制し、オピオイド系薬剤も同様に腸管運動を抑制することで便秘やガス貯留を引き起こします。糖アルコールを含む一部の便秘薬(ラクツロースなど)は、大腸内で発酵しガスを発生させることがあります。また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期使用は、胃酸分泌を抑制し、小腸内細菌の異常増殖(SIBO)を誘発する可能性が指摘されています。
参照元: 小腸内細菌過増殖症(SIBO)とは | 一般社団法人日本医療予防協会, 高齢者における薬剤性便秘の実態と対策 - 日本老年医学会雑誌, オピオイド誘発性便秘症の病態と治療 - 日本老年医学会雑誌, ラクツロースシロップ65% | 添付文書 - 医薬品医療機器総合機構(PMDA)

🛠 2. 薬剤師が現場で活用できる「問診のヒント」

患者様から「お腹が張る」と相談された際、以下の3点を尋ねるだけで、原因の切り分けがよりスムーズになる場合があります。

  1. 「お腹の張りは、排便後には軽くなりますか?」
    • Yes → 便秘が主因の可能性が高い
    • No → 腸内細菌バランスや食事の影響(SIBO等)の可能性が高い
  2. 「食事の直後(食後すぐ)に張りますか?」
    • Yes → 食物分解時のガス産生過多、あるいは胃の消化機能低下の疑い
  3. 「現在、他の病院から出ているお薬で、喉が渇いたり便秘になりやすいものはありますか?」
    • 薬剤性の関与を確認
根拠となる情報元の詳細を見る引用元文章: 腹部膨満感を訴える患者に対しては、排便との関連、食事との関連、服薬歴などの問診が鑑別診断に役立ちます。排便後に症状が軽減する場合は便秘が原因として考えられ、食後の症状はSIBOや機能性ディスペプシアなどが疑われます。また、抗コリン薬やオピオイドなどの薬剤が腹部膨満感を引き起こす可能性があるため、薬剤歴の確認も重要です。
参照元: おなかの張り(腹部膨満感) - 日本消化器内視鏡学会, 過敏性腸症候群の診断と治療 -日本における現状と課題-

💡 3. 実務で役立つ対応策(アプローチ)

① 消泡剤の提案・確認
ジメチコンなどの消泡剤は、腸内のガスの表面張力を低下させ、気泡を合一させることで排出しやすくします。便秘薬と併用しても良いか、あるいは単剤で良いか、症状に合わせて提案します。
② 食生活の指導(低FODMAP食)
小麦や玉ねぎ、豆類など「腸内で発酵しやすい糖質(FODMAP)」を多く含む食事を控えるアドバイスは、IBSガス型の方に対して有効性が報告されています。
③ 受診勧奨のタイミング
「体重減少」「血便」「夜間の腹痛」「貧血」がある場合は、消化器内科での精査が必須です。これらのレッドフラッグを見逃さないようにしましょう。
根拠となる情報元の詳細を見る引用元文章: ジメチコンは消化管内のガスの表面張力を低下させ、小気泡を合一させることで、ガスを排出しやすくする作用があります。過敏性腸症候群(IBS)の症状緩和には、高FODMAP食の制限が有効なアプローチの一つとして推奨されています。また、腹部膨満感に加え、体重減少、血便、夜間の腹痛、貧血などの警鐘症状(レッドフラッグ)がある場合は、重篤な疾患が隠れている可能性があるため、速やかに医療機関を受診するよう促すべきです。
参照元: 過敏性腸症候群の診断と治療 -日本における現状と課題-, ジメチコン | 添付文書 - 医薬品医療機器総合機構(PMDA), おなかの張り(腹部膨満感) - 日本消化器内視鏡学会

🌿 まとめ:柔軟な視点を持とう

「お腹の張り=便秘」という思い込みは、時に患者様の苦痛を長引かせてしまいます。

もし患者様が「便秘薬を飲んでいるのにお腹が張る」と訴えてきたら、「ガスを出しやすくする薬(ジメチコン等)」の併用を検討するか、食事内容の聞き取りから始めてみてください。

薬剤師として、薬の追加だけでなく「そのお腹の張りは、本当に便が詰まっているからでしょうか?」という問いかけを一つ加えるだけで、患者様からの信頼感は大きく変わるはずです。明日からの服薬指導で、ぜひ活用してみてくださいね!

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